同期発電電動機の始動方式ざっくり解説〜同期始動方式編〜
じゃあ大容量の同期発電電動機はどう動かすねん
前回(制動巻線始動方式)からの続き↓
前回は小中容量の同期発電電動機で主流な制動巻線始動方式について説明した。
今回はじゃあ大容量機はどうやって動かせばいいのか・・・ということについて説明する。
その方法は同期始動方式。
その前に、なぜ同期発電電動機が始動を開始できないのかを話す。
同期機っていうのは固定子がつくる回転磁界(この言い方がややこしいと思う人は円筒型の筒の中で磁石だけが回ってるイメージをしてもらうとわかりやすい)に、回転子がひっぱられてくるくるまわる。
このくるくる回る速度ってやつがつまり周波数である。たとえば60Hzなら1秒に60回回る磁石ってわけだけど、いきなりこんな早く回られてもついてこれないのである。
回転磁界が早すぎてついていけない→回らない→要は始動トルクがない
逆に言えば、この回転磁界超ゆっくり回ってくれれば、磁石の動きについて行けることになる。
この考えのもとに、最初は回転磁界を超ゆっくり回して行って徐々に早めると、回転子はこの動きについてこれる。こんな感じで最終的に定格周波数に持ち込んでやろうというわけである。
これは前回説明した制動巻線型始動方式に比べて系統に動揺を与えにくく、大容量機でも適用できるのだ。
良い方法ではあるが残念ながら弱点もある。この始動方式は説明したように徐々に早くなる回転磁界を求めるので、
徐々に周波数の高くなる回転磁界が必要
↓
徐々に周波数の高くなる界磁電流が必要
↓
徐々に周波数の高くなる電源が必要
ということになる。そんな都合の良い電源、どこに転がってるのかというとわざわざ始動用の発電専用機を用意するのである。
界磁電流があらかじめ与えられている発電電動機と、この発電専用機と電気的に接続し、発電専用機をゆっくりと始動させる。すると同期化力によって発電電動機は同期され始動を始めるので、定格速度に向かわせる。
ちなみに主回路が複雑になってしまうという弱点もある。
まとめ
同期始動方式は発電専用機と発電電動機を電気的に直結し、同期化力によって発電電動機の始動を開始する方式で、系統への動揺も少なく、大容量機まで適用可能であるが、主回路が複雑になるという弱点もある。
余談(初学者はとりあえず読み飛ばし推奨)
ちなみにもちろん同期機の発電の時はこの回転子は外部からの力で動かされるので(揚水発電所なら水の力とかで)この始動トルクがないとか言う話をしてるのは同期機を電動機として利用している場合の話である。
で、電動機として利用する場合には普通に考えたら明らかに誘導機のほうが低コストだしいいんだけど、誘導機は発電機として使うには滑りの関係なんかで厳しい点がある。そういうわけで揚水発電所みたいな発電機も電動機も必要になるところではコスト削減やスペースの確保のためなんかに発電用に用意した同期機を電動機としても活用しようとするのである。
この手の問題で「揚水発電における同機器の始動方式・・・」って言ういいまわしがされるのは同期機を電動機として使う主要な設備が揚水発電なんだよってこと(だと思う)